文部科学省科学研究費補助金(基盤研究B) 研究期間:平成26年~28年度

医療制度と歴史背景から見た
インフルエンザパンデミック
-国際比較と二次元的実証研究-

     

研究概要
research outline

20世紀初のインフルエンザパンデミックであるスペインかぜ(1918年)の死亡者数は全世界約5000万人であった。2009年メキシコ発の新型インフルエンザの死亡者数は約1.8万人以上で、世界の国や地域に拡大したが、死亡率は国や地域で大きな差があった。我々のこれまでの研究で、国や地域の重症度や死亡率の相違は、医療技術・資源、医療制度、社会経済背景等が起因していることを確認している。

本研究班は、過去のインフルエンザパンデミックについて、各国の医療制度と感染拡大や重症化・死亡率との関係を、スペインかぜ当時の診療録の検証や、これまでの研究基盤を利用し、アジア太平洋諸国の現地の臨床データ、関係者への聞取り調査やアンケート調査等により、質的、量的、歴史的な臨床疫学研究を行い、その成果を今後のインフルエンザパンデミック対策に資するものとする。

研究代表者:工藤宏一郎(早稲田大学 地域・地域間研究機構 AHC研究所)
研究分担者:山田満(早稲田大学 社会科学研究科教授、AHC研究所長)
研究協力者:間辺利江(帝京大学医学部 衛生学公衆衛生学講座 助教)


研究計画・方法(概要)

本研究は、過去のインフルエンザパンデミックの罹患率、死亡率の説明要因を政策的、社会学的、臨床医学的の実証研究を行う。スペインかぜについては、当時の実際の診療録を解析し重症化(死亡)に至る要因を探求する。アジアかぜ、香港かぜについては、既に発表の学術論文から得られるデータから出来得る限りの現在の統計手法を用いて科学的に解析し、重症(死亡)要因を検証する。2009 年新型インフルエンザパンデミックについては、アジア・太平洋諸国の医療制度の調査を行い、新型インフルエンザの罹患率、死亡率との関係について記述する。更に、調査国の医療従事者、専門家への聞き取り調査による質的研究を実施。以上より得られた成果をガバナンス、国際関係論、臨床医学の専門家が包括的に検討し、将来のパンデミック対策に資する。

  • 1918 年スペインかぜの診療録からの症例検討

    東京第一衛戍病院陸軍病院(旧陸軍病院)の診療録のレビューによるスペインかぜ患者の死亡要因の検証

  • アジア・太平洋諸国の社会保障制度や社会経済的要因とインフルエンザパンデミックの患者数・死亡者数の関係の考察

    メキシコ、ベトナム等の国々の社会保障制度とインフルエンザパンデミックの死亡者数との関係についての調査研究。

  • インフルエンザパンデミック・鳥インフルエンザの 空間疫学研究

    2019年新型インフルエンザ、及び将来のパンデミックが危惧される鳥インフルエンザの過去・現在のアウトブレイクの発生場所・時の同定と、空間的-時間的集積の社会経済的背景との関わりを考察

  • 「人間の安全保障」からみたアジアの人権 -平和構築の視点から-

    西側西欧社会で使われる「人間の安全保障」と、アジアの権威主義国家で広く受け入れられている「非伝統的安全保障」の重なりの領域を視野に、東南アジアの人権問題の考察。


研究結果・業績

研究組織

研究代表者:工藤宏一郎 (早稲田大学 地域・地域間研究機構 AHC研究所)
研究分担者:山田満 (早稲田大学 社会科学研究科教授、AHC研究所長)
研究協力者:間辺利江 (帝京大学医学部 衛生学公衆衛生学講座 助教)

早稲田大学 地域・地域間研究機構 AHC研究所

e-mail:kklabo@kklabo.gr.jp